自動火災報知設備
火災は人の生命を奪い、財産を消失させる脅威です。この脅威を避ける方法として、安全な避難活動をおこなうための迅速な告知システムが必要です。こちらでは、自動火災報知設備群による火災報知システムについてご紹介します。
自動火災報知設備とは
自動火災報知設備は、感知器で火災発生を発見し、音響装置(ベル)を鳴動させて建物内の人の避難、および火災エリアの消火活動を促す設備群です。
感知器
感知器には、煙感知器・熱感知器・炎感知器があります。天上に設置され、そのエリアに発生した火災をキャッチします。
煙感知器
火災発生時の煙に反応し、受信機に情報を伝達するセンサーです。
熱感知器
火災発生時の熱に反応するセンサーです。 一定温度以上になると反応する定温式スポット、一定の温度上昇率を超えると反応する差動式スポット等があります。
炎感知器
火災発生時の炎の光に反応するセンサーで、日光の影響を受けない場所に設置されます。炎が発する紫外線に反応する紫外線式と、赤外線に反応する赤外線式の2種類があります。
機器収容箱(総合盤)
総合盤は、火災発生を知らせるための発信機、表示灯、音響装置(ベル)などを一体化したキャビネットです。
発信機は火災を発見時にボタンを押して報知する必要があるため、人の手が届きやすい設置高に設ける必要があります。
中継器
感知器が発信した火災信号を受信し、R型受信機に伝達する装置です。
受信機
受信機は、煙感知器・熱感知器・炎感知器が感知した情報を受けて、建物内の消火設備の稼動を促す司令塔です。 受信機はP型・R型があります。
P型は火災発生を一定区域ごとに1回線設けており、回線数が多い1級と回線数が5以内の2級があります。小規模の建物に向いています。一方、R型は、起動した感知器を特定できるタイプもあるので、火災が発生した場所を絞り込むことが可能です。P型に比べて配線本数が少なく、大規模な建物に適しています。
自動火災報知設備設置・施工サービス内容
【Case.1】某社研究所への設置
施設規模 | 20棟分 |
---|---|
工事内容 | 受信機、感知機の取替え工事 |
施工の経緯 | 以前使用していた受信機の耐用年数が限度を超え、幹線が劣化しました。また、感知機も劣化が進んでいたため、受信機の交換に合わせて自動火災報知設備を総入れ替えしました。 |
備考 | 当該物件は規模が大きく、240回線が必要であるため、受信機は特注のものを使用しました。自動火災報知設備の施工だけでなく、設計図の作成から携わりました。 |
防排煙設備
火災で発生する煙は、予想以上に早くかつ広範囲に広がるため、迅速・適切な排煙作業が被害拡大の防止に繋がります。こちらでは、防排煙設備が連携して排煙をおこなうシステムについてご紹介します。
防排煙設備とは
防排煙設備は、火災が発生した際に煙の拡散を防ぎ、関連する防火戸、シャッターなどを連動させ、建物内の人の避難、および煙による二次災害を防ぐ設備群です。
煙感知器
煙感知器は、防排煙設備のスターターです。火災による煙が居室などの空間に充満すると、天上に設置されている煙感知器のセンサーが反応します。この信号は連動制御盤に伝達され、防排煙をおこなうための一連の設備の稼動が始まります。
煙感知器には光電式(スポット型)、イオン式(スポット型)があります。光電式は煙が光をさえぎることにより反応し、イオン式は煙によるイオン変化で反応します。なお、煙感知器は天上から突出した露出型、天上に埋め込んだ埋め込み型があります。
連動制御盤
連動制御盤は、煙感知器が感知した情報を受けて、建物内の煙の拡散を防ぐ司令塔です。
連動制御盤は緊急時に防災担当者がすぐに出動できるよう、常時、人がいる管理人室、守衛室、防災センターなどに設置されます。
自動閉鎖装置
自動閉鎖装置は、火災発生エリアの隔離を目的とした、自動で防火戸を閉鎖する装置です。連動制御盤は火災による煙を感知すると、そのエリアの防火戸を閉鎖して火災の拡大を防ぎます。この防火戸を閉鎖するのが自動閉鎖装置です。
廊下や通路など、その空間が避難経路になっている場合もあるため、自動閉鎖装置によって閉じられた防火戸は手動で開閉することが可能です。なお、自動閉鎖装置にはシャッター用とドア用があります。
排煙口開放函
排煙口開放函は、火災で発生した煙を屋外に排気する起動押しボタンです。火災が発生したエリアに煙が充満すると、避難や消火活動を妨げます。そのため、避難経路や消火活動をおこなうエリアでは、排煙口開放函の中にある押しボタンを手動で稼動させ、煙を排気しなければなりません。
煙口開放函には、ボタン式とレバー(ワイヤー)式があります。設置高は人が操作しやすい高さに設定します。
排煙機
排煙機は、火災で発生した煙を排除するための装置です。屋上などの屋外に設置されています。 建物内の有害な煙の充満を防ぐため、手動で排煙口開放函の押しボタンを押すことによりとダクトの排煙口が開放され、排煙機が自動で起動します。
ダンパ
排煙口開放函は、火災で発生した煙を屋外に排気する起動押しボタンです。火災が発生したエリアに煙が充満すると、避難や消火活動を妨げます。そのため、避難経路や消火活動をおこなうエリアでは、排煙口開放函の中にある押しボタンを手動で稼動させ、煙を排気しなければなりません。
煙口開放函には、ボタン式とレバー(ワイヤー)式があります。設置高は人が操作しやすい高さに設定します。
防排煙設備設置・施工サービス内容
【Case.1】某社工場への設置
施設規模 | 延べ床面積 20,000m² |
---|---|
施工期間 | 約4カ月 |
備考 | 当該施設の竣工に合わせ、設計の段階から防排煙設備設置・施工に携わりました。 |
【Case.2】某社ビルへの設置
施設規模 | 延べ床面積 約36,000m²、15階建て |
---|---|
施工期間 | 約12カ月 |
備考 | 当該施設の竣工に合わせ、設計の段階から防排煙設備設置・施工に携わりました。 |
消火設備
火災を迅速かつ効率よく消火するための方法として、さまざまな消火設備をご用意しております。こちらでは、火災エリアの特性に応じた機能を持つ消火設備群についてご紹介します。
消火設備とは
消火設備は、屋内・屋外を問わず、そのエリアの特性を考慮した使い分けが必要です。いかに安全に消火させるか、火災後の損失を防ぐかの視点を持たなければなりません。
消火栓
屋内消火栓
水源・加圧送水装置(消火栓ポンプ)・配管・ホース・ノズルなどで構成されています。また、火災警報装置などが併設されているタイプもあります
屋外消火栓
屋外消火栓は、屋内消火栓と同様に、屋外で消火活動をおこなうための消火設備です。
スプリンクラー
天井に取り付けられたヘッドから、水を散水させる装置です。通常、ヘッドまで水が貯められていて、火災により熱せられ、部品が溶けることにより、自動的に散水される仕組みです。
水噴霧消火設備
水噴霧消火設備は、スプリンクラーの機能・形状と似ていますが、散水される水の粒子が細かく冷却効果・窒素効果にすぐれ、油火災に有益です。また、油と水が混ざることで生じる混合物が流出した油の表面を覆い(=エマルジョン効果)、油の気化を抑えて火災の拡大を防ぎます。
泡消火設備
泡消火設備は、駐車場、自動車修理工場など、機械や危険物を取り扱う施設で多用されている消火設備です。スプリンクラーヘッドに金属網が被さったようなヘッドを介して、泡消火薬剤と水と空気の混合物を散布します。炎とその発生源を冠泡することで、一気に鎮火させます。
不活性ガス消火設備
二酸化炭素、窒素ガス、アルゴンなどの不燃性ガスを放出して、酸素濃度を抑えて鎮火する消火設備です。不活性ガス消火設備は、水や消火剤による消火後の汚損が少ないという利点があります。しかし、不活性ガスは人体に有害なため、人がいる空間での設置には不向きです。
ハロゲン化物消火設備
ハロゲン化物消火設備は、ハロン1211、ハロン1301、ハロン2402を散布する消火設備です。ハロゲン化物消火設備は、水や消火剤による消火後の汚損が少ないという利点があります。しかし、ハロゲンはオゾン層を破壊する特定物質として、モントリオール議定書にて生産・消費が禁止されました。したがって、現在はハロン1211、ハロン1301、ハロン2402と代替物質のHFC-23、HFC-227eaが用いられています。
粉末消火設備
粉末消火設備は、窒素ガスや二酸化炭素で粉末消火剤を噴霧する消火設備です。粉末消火設備は冷却効果や燃焼の連鎖・拡大を防ぐ効果があるため、駐車場や航空機格納庫などの機械や危険物を取り扱う施設で多用されています。
消火器
一般的によく知られている初期消火用の器具です。消火薬剤には、粉末・強化液・二酸化炭素などの種類があり、油火災に強い、一般火災に強いなど、それぞれ異なる特長を持ちます。
消火器の規格改正[2011年1月1日施行]
消火器の安全上の注意事項等についての表示が義務付けられ、規格が変更になりました。これにより、2012年1月1日から旧式の消火器は形式失効となり、2021年12月31日までに新規格の消火器へと交換が必要です。 また、製造年から10年を経過した消火器につきましては、引き続き、交換または耐圧性能試験(水圧試験)が必要になるのでご注意下さい。
避難設備
火災の際、消火活動も大切ですが、同様に人命を守るための避難も見過ごせません。こちらでは、さまざま機能・個性を持つ避難設備群についてご紹介します。
避難設備とは
避難設備は、メーカーによってさまざまな工夫が成されています。設置方法、および使用方法が機器ごとに異なりますので、事前の確認が必要です。
緩降機
緩降機は、使用する人が自分ひとりで自重を用いて降下する避難設備です。
滑車状の調速機、ロープ、着用具、リールなどで構成され、建物に常時設置されている固定式と、緊急時に使用者が取り付けて使用する可搬式があります。
救助袋
救助袋は、袋状の滑り台のような避難設備です。降下する際に外界が見えないので、高い場所からの降下時に生じる恐怖感を緩和することができます。
垂直式
袋の中をらせん状に旋回しながら降下するタイプです。設置場所がコンパクトなので、市街地やビルの谷間に最適です。
傾降式
滑り台の要領で滑り降りるタイプです。傾斜を作らなければならないため、垂直式に比べて設置場所の確保が必要です。
避難はしご
避難設備のスタンダードです。固定はしご、立てかけはしご、つり下げはしごがあります。
ロープを使用した簡素な作りのものから、金属のフレームを用いた耐久性の高いものまであり、前者は消防庁の告示に準じた取り扱いが必要であり、後者については国家検定品目に指定されています。
誘導灯
誘導灯は、火災などの緊急事態の際、現場に居合わせた人を直近の安全な場所に誘導するためのサインです。こちらでは、誘導灯の役割についてご紹介します。
誘導灯とは
誘導灯は、高い視認性が求められます。直線距離で30m離れた場所から表示シンボルを判別できる明るさ、色が必要です。また、付加機能として、点滅機能、音声誘導機能が備わった機種もあります。
避難口誘導灯
避難口誘導灯は、避難口の位置を知らせるサインです。
通路誘導灯
通路誘導灯は、避難経路を知らせるサインです。
客席誘導灯
劇場や映画館、集会場などに設置する誘導灯です。
非常警報設備
火災発生の報知は、この非常警報設備の作動から始まります。施設内にいる人々の避難行動を促すため、その役割はきわめて重要です。こちらでは、非常警報設備についてご紹介します。
非常警報設備とは
非常警報設備は、通称「非常ベル」と呼ばれ、起動装置、表示灯、音響装置で構成されています(=一体型)。非常警報設備として、非常用放送設備もあります。音声による警報で避難誘導をおこないます。。
1.起動装置
起動装置は、火災の発生を知らせるためのスターターです。
2.音響装置
音響装置は、押しボタンを押すことでベルが鳴動します。もう1つは、スピーカーから音声による警報音を発します。
3.表示装置
表示装置は、常時点灯している赤色のランプです。
4.放送設備
収容人数の多い大型施設では、警報発令による避難混乱を招くため、音声による避難誘導をおこないます。